何にも起きなくて幸せ

将棋の世界に、「負けて当然」という言葉があるようだ。

何でも、開始直後の陣形が最も強いものであり、その形を崩してゆくのだから、将棋は”負けて当然、勝って偶然”ということらしい。

なるほど、と思う。



考えてみるに、人生というのがまさにそういうものではないだろうか。

何をするにも、リスクをおう確率の方が圧倒的に多いように思う。

最初に想定した「成功」が、そのままの形で手に入ったことなど、ほとんど（あるいは全く）なかったような気がする。


そもそも、”生きる”ということ自体、相当に大変なことなのである。
贅沢などせずとも、”ただ生きること”だけでも、多くのリスクを払わねばならない。


人生はギャンブルだ、という言葉もあるが、まさにそのとおり。
始めから負け試合なのである。

ギャンブルは意志を持って始めることができるが、人生は強制的に”始まって”しまう。

それだけではない。
多くの人は、自ら「止める」ことも出来ない上に、「止めさせられる」ときは何の慈悲もなく、あっけない。


人生はやはり、悲劇だ。
何にも起きないなら、むしろ幸せなのである。

なんだ、これほど気楽なものはない。