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日々のニュースについて考えたことを色々と.  少し頭を使う必要があるかもです 

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語り手である主人公は、彼がもつ知識や味のある台詞を取り除くと、その思想にはほとんど色がついていない。
物事に対して、あまり感情移入をしようとしないタイプにみえる。

彼が「必殺仕事人」の役を引き受けたそもそもの原因も、ある老女へ”おつり”を返し損ねたことであって、そこには「経済学部」に所属する彼ならではの、すこしお固い考えしかないのだ。

ところが、そんな彼にも自分の感情だけで行動を起こした(と読み取れる)部分が2つある。

一つ目は、美子ちゃんへのキス。
それから、”本物の”仕事人に対する妨害である。


一つ目のキスについて。
彼はキスのあと、「魂とは確かに存在して、、、」と悟っている。

一つ前の章で、彼は「死ぬ前に何を考えるか」という質問に向き合ったとき、その思考の中で「人は限られた熱量を消費するだけの有機体だ」という考えを持ち出したのだが、それはこの衝動的なキスによって否定されたといえる。

ちなみに、美子ちゃんは死ぬ前に2人の人間に”魂”をプレゼントしている。
しかし、主人公にあげた”それ”は「生」を見いだすものであるのにたいして、牧野に渡したものは「呪い」であり、つまるところ「死」である。

この2つが味のある対比になっていて、興味深い。


「死」とは解釈でしかない、と僕はおもうのだ。

人の命が消えることを、実体として理解できたならば、僕たちは「死」を怯える必要はなくなるだろう、と思う。

しかし、僕たちは”生きているうちに死を経験することはない”のだ。
僕たちが「死」を思うのは、必ず”生きている状態で”のみなのだ。

「死」とはあくまで概念上のものであり、ひとつの思想である。
乱暴に言ってしまえば、存在するかどうかさえ定かではない。


「人は死ぬ前に何を思うのか」という質問はつまり、「無限大の一つ手前の数字はいくらか」と似ている。
人が”最も死に近づいた瞬間”ならば、死についての答えを少しは見いだせるのではないか、という期待である。

しかし、そんな瞬間であっても”まだ生きている状態”なのは変わらないわけで、望んだ答えは当然得られないだろう。

「しかし、あくまで思考実験として、考えてみる価値はあるよね」っていうのがこの本ではないだろうか。


2つ目の、”本物”の仕事人にたいする妨害の部分から感じた主張も、これと同じである。

主人公が何か一つの答えを読者に提示しているわけではないので、僕たち自身で解釈する必要がある。
次の記事で、少しだけその解釈をしてみようと思う。




・・・『MOMENT』(本多孝好 著)についての感想。(つづく)



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